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田所サキは、父のトシフミ、母のサエコ、妹のフミと4人で暮らしている。どこにでもある、至って普通の家庭。よその家庭と違っていたのは、父がアルコールに溺れていることと、母が新興宗教の信者であること。田所家毎晩の一家団欒は、酔った“化け物”の介抱。毎朝家を出て仕事に行く時とは別人になって帰ってくる父を迎える日は、壁に掛けたカレンダーに赤いマジックで×印をつける精一杯のいやがらせをするのがサキの習慣だった。
週末や夏休みも、記憶にあるのは酔った父の姿。プールに行く約束をしても、飲み仲間たちが家に押し寄せ、リビングはたちまち雀荘になってしまう。そんな中母はというと、せっせとお酒を作りながら、祭壇に向かって勤行。翌日、父は二日酔いでプールに行く約束はもちろん果たせず、酔っ払って床でクロールをしていた。クリスマスにサンタさんがやってくることを期待しても、2階のベランダから入ってきたのは酔って化け物になった父だった。 -
高校生になったサキ。相変わらずお酒に溺れる父だったが、母はそんな生活に限界を迎え、父の誕生日に家族の前から消えてしまう。母がいなくなってしまったことで自分を責め、自分の気持ちに蓋をしていくサキ。お酒を飲むことをやめた父は、サキとフミのために晩御飯も作るようになる。しかしそんな日々も長くは続かない。新作ワインの解禁とともにお酒も解禁してしまう父。綺麗だったカレンダーにも赤い×印がだんだんと増えていき、再び毎日のように酔っ払って帰ってくるようになる。
再び訪れる“化け物”との日常の中、サキが唯一楽しめたのは漫画を描いている時間。酔っ払った父のエピソードを描いた漫画は、親友のジュンやその友達にも好評で、サキにとって心の拠り所になっていた。 -
高校を卒業したものの、自分の進路を見つけられないサキ。父の飲酒はエスカレートし、毎日記憶をなくすほどアルコールに溺れていた。いくらお酒をやめてと訴えてもまるで聞かない父に対して無関心になろうと決め、寂しさを恋愛で埋めるサキ。しかし、付き合った彼氏はとんでもないDV男だった。「こんな自分でも好きって言ってくれる」と、自分の感情に蓋をして全てを受け入れ続けるサキ。ついにはプロポーズを受けてしまうが、自分は愛されていないということに気がつき、別れを決断する。
恋愛や漫画に没頭し、父のことは考えまいと無視して過ごしていた数年の間に、病が父を蝕んでいた。医者が言い渡した余命は半年。突然でありながら、あっけない病気の発覚に何も考えられないサキ。そんな彼女に妹と親友が寄り添い、支えるが、父が借金を作っていたことを知り、今まで抱えていた気持ちをぶつけてしまうー。
MATSUMOTO
松本 穂香田所サキ役
1997年生まれ、大阪府出身。主演短編映画「MY NAME」(15)で俳優デビュー。連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK/17)、「この世界の片隅に」(TBS/18)主演、「病室で念仏を唱えないでください」(TBS/20)、CM「意識高すぎ!高杉くん」シリーズ、JR SKISKI 2018-19メインキャストを務める。主な出演作に『恋は雨上がりのように』(18/永井聡監督)、『世界でいちばん長い写真』(18/草野翔吾監督)、『チワワちゃん』(19/二宮健監督)、『君は月夜に光り輝く』(19/月川翔監督)などがある。声優としては『きみと、波にのれたら』(19/湯浅政明監督)に参加。『おいしい家族』(19/ふくだももこ監督)、『わたしは光をにぎっている』(19/中川龍太郎監督)と主演作品が続き、今後も『みをつくし料理帖』(20/角川春樹監督)が控えている。
SHIBUKAWA
渋川 清彦田所トシフミ役
1974年生まれ、群馬県渋川市出身。モデルでの活動を経て、『ポルノスター』(98/豊田利晃監督)で映画デビュー。2013年に『そして泥船はゆく』(渡辺紘文監督)で映画単独初主演。16年には、『お盆の弟』(大崎章監督)で第37回ヨコハマ映画祭にて主演男優賞を受賞した。数多くの映画やテレビドラマ、その他CMなどにも出演している。近年の出演作は『モーターズ』(15/渡辺大知監督)、『アレノ』(15/越川道夫監督)、『蜜のあわれ』(16/石井岳龍監督)、『下衆の愛』(16/内田英治監督)、『榎田貿易堂』(18/飯塚健監督)、『柴公園』(19/綾部真弥監督)、『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』(19/平山秀幸監督)などがある。片桐監督とはパンクロッカーの幽霊役で出演した『ルームロンダリング』(18)に続き、2度目のタッグとなった。
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YUI
IMAIZUMI今泉 佑唯田所フミ役
1998年生まれ、神奈川県出身。欅坂46の元メンバー。2018年11月に同グループを卒業し、現在は女性ファッション誌「ar」のレギュラーモデルを務め、女優としても活躍。主な出演作に『劇場版ファイナルファンタジー XIV 光のお父さん』(19/野口照夫監督)、「ミリオンジョー」(19/TX)、 「左ききのエレン」(19/MBS・TBS)などがある。今後の公開待機作品に『転がるビー玉』(20/宇賀那健一監督)、主演舞台「あずみ~戦国編~」がある。
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KENTA
HAMANO浜野 謙太木下役
1981年生まれ、神奈川県出身。ファンクバンド・在日ファンクのリーダー兼ボーカル。2006年に俳優としてデビュー後、数々の映画やドラマに出演。映画『婚前特急』(11/前田弘二監督)で第33回ヨコハマ映画祭・最優秀新人賞を受賞。主な出演作に『武士の献立』(13/朝原雄三監督)、『ディアスポリス―DIRTY YELLOW BOYS―』(16/熊切和嘉監督)、『笑う招き猫』(17/飯塚健監督)、『東京喰種 トーキョーグール』(17/萩原健太郎監督)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17/瀬々敬久監督)、『雪の華』(19/橋本光二郎監督)、『おいしい家族』(19/ふくだももこ監督)などがある。
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YURI
TSUNEMATSU恒松 祐里ジュン役
1998年生まれ、東京都出身。2005年「瑠璃の島」(NHK)で子役としてデビュー。2009年公開の『キラー・ヴァージンロード』(岸谷五朗監督)で映画デビュー後、大河ドラマ「真田丸」(16/NHK)や『散歩する侵略者』(17/黒沢清監督)などの話題作に出演。近年の主な出演作に『虹色デイズ』(18/飯塚健監督)、『3D彼女 リアルガール』(18/英勉監督)、『凪待ち』(19/白石和彌監督)、『いちごの唄』(19/菅原伸太郎監督)、『アイネクライネナハトムジーク』(19/今泉力哉監督)、『殺さない彼と死なない彼女』(19/小林啓一監督)などがある。
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RIE
TOMOSAKAともさか りえ田所サエコ役
1979年生まれ、東京都出身。1992年、CM出演を機に芸能界デビュー。ドラマ「金田一少年の事件簿」(95/NTV)で注目を集める。ドラマを始め、映画、CMと幅広いジャンルで活躍。主な出演作に『ちょんまげぷりん』(10/中村義洋監督)、『100回泣くこと』(13/廣木隆一監督)、『PとJK』(17/廣木隆一監督)、『SUNNY~強い気持ち・強い愛~』(18/大根仁監督)、「アシガール」(17・18/NHK)、土曜時代ドラマ「ぬけまいる」(18/NHK)、『貞子』(19/中田秀夫監督)、舞台「LIFE LIFE LIFE~人生3つのヴァージョン~」、舞台「キネマと恋人」、舞台「鎌塚氏、舞い散る」(19)など多数。公開待機作に『mellow』(20/今泉力哉監督)がある。
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SHOGO
HAMA濱 正悟中村聡役
1994年生まれ、東京都出身。2015年にGirlsAward×avex「BoysAward Audition」で特別賞を受賞。ドラマ「下町ロケット」(15/TBS)や『祈りの幕が下りる時』(18/福澤克雄監督)などに出演する傍ら、16年から1年間、情報エンタテインメント番組「ZIP!」のレポーターを務めた。スーパー戦隊シリーズ「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」(18-19/EX)で演じたルパンブルー/宵町透真役で注目を集める。そのほかの出演作に、「コーヒー&バニラ」(19/MBS)、「サイン-法医学者 柚木貴志の事件-」(19/EX)など
KATAGIRI
脚本・監督片桐 健滋
1979年生まれ、大阪府出身。高校在学中より8mm映画の製作を始め、1997年、神奈川映像コンクールで「ice・cream」が入賞。2000年に渡仏し、フランソワ・トリュフォーの編集で知られるヤン・デデ氏に3年間師事。03年に帰国後、ミュージックビデオ、イベント映像等のフリーの編集を経て、演出部に転向。以降、崔洋一、豊田利晃、廣木隆一、羽住英一郎、中村義洋監督らの助監督を務める。「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2015」にて準グランプリを受賞した『ルームロンダリング』(18)で自身初の長編映画のメガホンを握り、その後MBSで放送された連続ドラマでもメガホンを執った。近年では人気漫画のドラマ化で話題となった「きのう何食べた?」(19/TX)でも監督を担当した。
KYUMA
脚本久馬 歩(お~い!久馬)
1972年生まれ、大阪府出身。2001年、ザ・プラン9を結成。NHK上方漫才コンテスト優秀賞、BGO上方笑演芸大賞を受賞する等、お笑い芸人として活躍。毎月開催イベント「月刊コント」の責任編集も行っており、2019年7月に10周年を迎えるほど好評を博している。作家としても活動中で、様々なバラエティ番組・舞台・ドラマ・映画の脚本も手掛けている。主な作品は、バラエティ番組「ピカルの定理」(10-13/CX)、ドラマ「ラーメン大好き小泉さん」(15/CX)、ドラマ「マネーの天使~あなたのお金、取り戻します!~」(16/YTV)、映画『Bの戦場』(19/並木道子監督)など。
菊池真理子
埼玉県出身。まんが家。「酔うと化け物になる父がつらい」(17/秋田書店)で多くのメディアに取り上げられ話題に。既刊に「毒親サバイバル」(18/KADOKAWA)、「生きやすい」(19/秋田書店)がある。月刊エレガンスイブ(毎月26日発売/秋田書店)にて「依存症ってなんですか?」を連載中。
GOOD ON THE REELグッド オン ザ リール
同じ学校で出会ったメンバーで2005年に結成。心に響く歌詞やメロディで独自の世界観を奏でる五人組。
2011年のデビューから試聴機をきっかけとした口コミだけで爆発的な反響を起こし、ワンマンチケットは数時間でSOLD OUT。
2015年のメジャー・デビュー後の2016年には、自主ライブ企画「HAVE A "GOOD" NIGHT」50回目の開催となる日比谷野音公演も完売。2019年には、セルフカヴァーベストアルバム「GOOD ON THE REEL」をリリースし、バンドの第2章ともいえる新たな出発を迎える。
背中合わせ
作曲:千野 隆尋 作詞:千野 隆尋
ねぇ 覚えている?
撮るとなると硬くなって笑えない写真
ねぇ 覚えている?
一度言うとそればかり買ってくるお菓子
ねぇ 覚えている?
誰が言ったかもわからずに使う名言
ねぇ 覚えている?
靴ひもを結ぶ時はいつも固結び
どう思っていたんだろう 何を考えていたんだろう
いつでもそばにあった 当たり前の日常をまさか
愛しく思うなんて
背中合わせ 合わせられる距離なら
向かい合えるはずだったなんて どんなに辛い時だって
背中合わせ あんなに一緒にいて
こんなにも知らないことばかり 今更になって気づいた
ねぇ 覚えている?
洗濯物を分けて洗うようになって
ねぇ 覚えている?
訳もなくイライラして避けるようになった
どう思っていたんだろう 何を考えていたんだろう
いつでも付きまとって 鬱陶しい日常をまさか
愛しく思うなんて
背中合わせ 働く姿なんか
考えたことすらもなかった 聞いたことすらもなかった
背中合わせ 愚痴を吐くこともなく
ただ黙って守っていたなんて 今更になって気づいた
ねぇ 覚えている?
やっと見つけた夢を話して怒鳴られた夜
ねぇ ついムキになって
「お父さんの子供になんて生まれたくなかった。」
背中合わせ 本気じゃなかったんだよ
言えるはずもなく時が経って 結局謝れなかった
背中合わせ 自分勝手な私に
相変わらず不器用に言った 「がんばれ。」だなんて 今更になって
ありがとう。